N.W.A.のメッセージについて

1.久しぶりの投稿

お久しぶりです。色々忙しかったのでブログ更新が滞りました。来週辺りにはMLBのTBレイズがやっている画期的な先発ローテについて書きたいと思います。

 

2.N.W.A.について

今回のブログ記事は1カ月ぐらい前から思っていたことについて書きます。読者の皆さんはN.W.A.と言うラップグループをご存知ですか?知らない方のために経歴を全て書くのがめんどくさいのでwikiリンクを張っておきますが、彼らは90年代辺りにヒップホップを通して米国における黒人に対する差別の現状を発信していたグループです。主に警察による差別を取り上げており、「警察なんてクソくらえ」のようなメッセージを発信していました。

このグループはとうの昔に解散しているのですが、その元メンバーIce Cubeがインスタグラムにこのような投稿をしました:

Straight Outta Comptonと言う曲の30周年を祝った投稿です。「N.W.A.と言ったらこれ!」みたいな曲です。最初は「ほえー、30周年なのか」と考えていましたが、ふと思いました。歴史的に大事なグループなので彼らの活躍は後の世代に受け継いでいくべきです。だけど30年経ったいま、警察による黒人に対する差別の実態は改善したのでしょうか?

 

3.差別は消えたのか?

僕は最近Uneasy Peace(Patrick Sharkey著)という本を読んでいます。近年の米国の都市部の犯罪率に着目した本です(まだ最初の2章しか読んでません)。そんな本書はCode of the Street(Elijah Anderson著)とOn the Run(Alice Goffman著)と言うエスノグラフィーを紹介します。前者は90年代のフィラデルフィアのゲットーに関する内容で、後者はその15年後に書かれたフィラデルフィアの別のエリアをカバーしたものです。この2つの作品を著者はこのように考察しています:

   The young men whom Anderson studied spent their days avoiding rivals and negotiating public space in the hopes of avoiding being victimized. Although the police were present in Code of the Street, which was written at a time when the national rate of incarceration was rising quickly, the various representatives of the criminal justice system - including parole officers, detectives, judges, prosecutors, and corrections officials - were not a constant presence in the lives of young black men.

   In Goffman's Philadelphia, the hierarchy of threat had shifted. Violence remained a central concern, as the young men whom she describes were entangled in local rivalries and were always at risk of lethal violence. But the threat posed by other groups of young men were sporadic, whereas the threat of a cop or a parole officer was constant. (Pg. 28-29)

訳すのがめんどくさいので本文を切り抜きました。簡単に説明すると、今の米国の都市部(一部除き)の犯罪率は歴史的に見て低い数値を叩き出しています。これは決して米国が安全である事を示唆している訳ではないです。ただ殺人が他人事ではなかった昔の米国に比べ、今の米国は圧倒的に安全です。ただその中、警察等の司法制度の魔の手の存在感が強くなっている、みたいな感じです。それをGoffmanがうまく描写しています。

米国の犯罪などを語る際は英語で言うNeighborhood Level Effectは無視できません。これについて詳しく知りたい方はSampsonが書いた本をお勧めします。

米国における黒人に対する差別の実態は多少改善したかと思われます。しかしまだまだです。例えばですが、ミズーリ州ファーガソン(ピンとくる人がいるかもしれませんが、Michael Brownが撃たれた場所です)では黒人に対する警察の差別的行為金銭的搾取(2つ目の記事は是非読んでほしいです)が記録されています。他にも例は沢山ありますが、とりあえず「状況は良くなったけど、まだまだ足りない」と言うのが僕の考えです。ちなみにこのテーマに関する学術的視点が欲しい方はこちらの論文をお勧めします。

なのでN.W.A.の功績や音楽を祝うのは良いですが、彼らが訴えていたメッセージを忘却してはいけません。なのでぶっちゃけると、何も考えずにヒップホップを聴いている人を見ていると少し嫌気がさします。最悪なのは黒人を侮蔑する単語を使う人です。反吐が出るレベルです。「これは個人的な意見です」と書きたいところですが、こればかりはちょっと許せません。

数週間前にThis is Americaが出ましたが、この時も同じ事を感じていました。音楽はエンタメでもあり芸術でもあるので、それを楽しむ精神は尊重します。だけど同時にメッセージと現実を照らし合わせて欲しいです。

もし反論があれば、いつでも受け付けます。

 

補足:Goffmanの本について

一応補足としてGoffmanの本について書きます。この本は非常に読みやすく、米国における警察と黒人コミュニティーの関係性が分かりやすく描写されています。個人的には違和感ある内容ではありませんでした。ただ皆が皆そう思っている訳ではなく、色々批判はあります。以下は主な批判です。時間があればどうぞ。2つ目と3つ目がお勧めです。

The Trials of Alice Goffman - The New York Times

Ethics On The Run - New Rambler Review

Alice Goffman's Implausible Ethnography - The Chronice of Higher Education

Book Review - Victor M. Rios