「先発投手」を再考する

1.常識に囚われないTBレイズ

僕は最近MLBのTBレイズに注目しています。岩村や松井が所属していたチームなのですが、TBレイズは今季どうあがいてもプレーオフに出れません。だけどそのレイズがいま行っている画期的な投手リレーが面白いのです。

普通なら投手リレーは以下のような流れになるかと思います:

先発投手(5~6回)→ 中継ぎ(1~2回)→ 抑え(1回) 

だけどレイズがいま行っているのが:

オープナー(1~2回) → 先発投手(5~6回) → 中継ぎ(1~2回) → 抑え(1回)

レイズはこれを中継ぎ・抑え投手として有名なセルジオ・ロモを使って今季初めてやりました。ちなみにですがロモはプロ生活において一度も先発を経験していません。

知らない人のために書いておきますが、ロモは数年前の日本対メキシコの親善試合のメキシコの選手として来日しています。ちなみに中村晃にホームランを打たれています。

 

2.なぜ先発投手を使わない?

ロモをオープナーとして使った理由はいたってシンプルです。

  • 対戦相手のエンゼルスは上位打線(当時は1番キンズラー/コザート・2番トラウト・3番アップトン)を右打者で固める傾向があるのですが、ロモは滅法右打者に対して強いのです。
  • 上位の右打者は1試合において4回か5回は打順がまわってきます。その内の1回を確実に仕留めるためにロモを使ったわけです。

一見物凄く破天荒な戦法ですが、一部界隈では前々から提唱されてきた戦法です。例えば僕は2016年にアリゾナで開かれたセイバーメトリクスの学会に参加したのですが、その時にMLBネットワークのブライアン・ケニーは「次に起こりえる野球界の革命とは?」の問いに対してこのような事を言っています:

The full bullpen attack. Why have a starting pitcher? Well, because we used to have one. He was the starter, and the closer, and the finisher, and everything in between. Why do you start with a guy? Why in the National League do you let a guy pitch the first two innings and have him bat? Why not have an opener, have a guy pitch two innings, pinch-hit for him, then bring in your Adam Wainwright type and let him go from the third to the eighth? It’s just tradition, really.

 要約すると「先発投手が長いイニング投げると言うのはただの伝統だよね」みたいな事を言っています。ちなみにドジャースも最近これをやっています(ちょっとチーム事情が違いますが)。

 

3.反対意見

勿論このような投手リレー・投手ローテに反対している人は多数います。「伝統に反する!」みたいな意見は正直個人的にどうでも良いのですが、「球団が金を節約するためにやっている」と言う意見も出ています。確かにMLBの契約の中には「〇〇イニング投げたらプラス〇億ドル」というのがちらほらあります(例:前田健太)。なのでもしこの投手ローテの組み方が主流になった場合は選手の年俸についても考え直さないといけません(その前に先発とリリーフの年俸の格差を是正して欲しい所ですが)。MLB選手会は歴史的に見て色々発言してきているので、選手会が何とかしてくれる事を信じます。

 

4.おまけ

TBレイズはちなみにこんな事もやっています。ロモは8回に登板をし、対戦相手のヤンキース打線を無失点に抑えています。そのまま試合は1点リードの中9回に突入したのですが、先頭打者のバード(左)の所でロモはサードにまわりました。そして次の打者のアンドゥーハー(右)になると、ロモはマウンドに戻りました。「ロモを試合に残したいけど、左打者との対戦成績は良くないからとりあえずサードに置くわ」って考えです。ちなみにバードは超絶プルヒッターなので「サードのロモに打つ可能性は低いだろう」と言う考えも兼ねています。面白い発想ですね。